その時はリーダーの30代のおばさんと
私の二人のシフトで、若い男性が解約に来た。
普通に手続き済ませて、
お決まりで
「宜しければ理由を教えて下さい」的な事を
最後に言うんだけど、
まあ大体あやふやか、
そう細々と話してくれる事は当然ない。
でも、その人はちょっと黙って、
それからぽそっと
「…もう、先が長くないんですよ」
私らは一瞬意味がわからず
反応出来なかったんだけど、
お構いなしに、堰を切ったように話しだした。
「もう手術しても遅い、全身に広がってる。
薬とかで遅らせても苦しいだけ。
だから何の処置もしない事に決めた。
半年、或いはその半分ももたないけど。
今日は携帯解約して、明日は部屋を引き払う。
私物は全部処分して、ちょっとぶらぶらして、
いよいよ動けなくなる前に、病院に行く」
と途切れ途切れに話してくれた。
抑揚もなく、
訥々と話すのを聞いてる内に
漸く事情が呑み込めた。
リーダーの方が早く立ち直ってて、
「差し出がましいですが、ご家族は?」
と尋ねるも、
「そんなの、いやしませんよ」
と返ってきただけだった。
それじゃ、と言って店を出ようとするので、
咄嗟に「有難うございました」と言ってしまった。
今思えば何が有難うだ、
気を使えよって自分でも思うけど、
何か言わないとと思った。
でも、ごめんなさいとか頑張れってのは
違うと思った。
その人は表面上は気を悪くした風もなく、
ちょっと困ったように笑って、
「聞いてくれてありがとう」
といって、
とうとう出て行ってしまった。
今はもうその仕事はしてないけど、
携帯ショップとか見かけるとたまに思い出す。
あの人が覚悟を決めていたのか、
それとも諦めていたのかは分からないけど、
生とか死とか、
そういうのをすごく衝撃的に印象付けられた。
ごめんそれ俺。
あの時そんないたづらがマイブームだった。
ポカンとしてた君の顔今でも覚えてる。
ホントごめんw
反省してないけどごめんwww
からかわれたともわからず馬鹿だなw
本当にいたずらだったらいいな
身内も居ない余命半年の男性は
居なかったんだね。