ある時、名前も名乗らない、
用件も言わない謎の女性から、
上司(当時の部署の最高責任者)宛に
電話がかかってきた。
上司に取り継ぐにも、
名前も用件もわからない。
当時新卒だった私は
「すぐに上にかわらず、ちゃんと用件は聞くこと」
と教えられていたから余計困惑。
「恐れ入りますが、お名前とご用件を」
と言っても
「いいえ、
上司様に代わっていただければわかりますから」
の一点張り。
仕方なく上司に代わると、
上司が明らかに苛立って
「そのお話は結構」
「電話もしてこないでください」
とガチャンと切った。
上司から、
「あれはヘッドハンティングの話だから。
もし同じ電話が来たら不在と言っておいてよ」
と言われ、
役職者ともなると
凄いんだなーと感心していた。
それから数日に一度、
毎日同じ女性から電話が来るので
私の方で
「上司はいない」とブロックしていた。
ある時社長がたまたまうちの部署に
差し入れを持ってきた(上司不在)時、
私がちょうどその電話の応対をしていた。
その日は何故か女性側が
「上司はいる筈」と
粘るのでとうとう我慢できなくなり、
「上司のヘッドハンティングのお話で
ございましたら、
もう既に本人からお断りした筈です」
「毎日、お名前も名乗られず、
案件も名乗られないお電話を頂きますが、
正直に申し上げますと、
上司も大変困っておりました」
と言ってしまった。
女性側は沈黙。
横で聞いてた社長が(代わって)と
メモをよこしたので、社長に代わった。
社長「あーすみません、社長の○○です。
えーっとヘッドハンティング?
ご苦労さん、でもちゃんと名前は
名乗るべきじゃないかなあ。
…え、違う?
じゃあどちら様…えっ?
Bさん(私の先輩女性)のお姉様!?」
そこから社長が電話をスピーカーにして
聞いた話はとんでもないものだった。
なんとうちの上司、
部下であるBさんに金をたかってた。
その額は数十万に登る。
LINEや録音も全て証拠がある。
Bさん自身がとてつもなく家庭で
苦労したこと、
お姉さんがそれなりに自立していること
を上司に話した数日後、上司から
「うちの部署の営業成績が上がらず
自分の給与も減ってしまった、
部下に頼むのは心苦しいが
娘のためになんとか金を出してくれ」
と何度も頼まれたそうだ。
名乗らなかったのは、
せめて大ごとにせずやめてもらいたい
気持ちからだった。
それなのに逆切れされ、
さらに部下にもヘッドハンティングなどと
嘘をつかれ、もう我慢ならない。
今日Bは公休を取っているが、
外から上司が何度もBのスマホに
金の催促の電話してきている。
社長がみるみる内に真っ青になって、
上司に確認する、
まずは連絡を待ってほしいと伝えた。
その数日後、
上司の始末書が回覧に回された。
Bさんへの借金の申込みは事実だったみたいだ。
さらに風の噂で、
娘の進学費用というのも嘘で、
ただ金をたかっただけ
ということも聞こえてきた。
この一件以降は会社用の
スマホ支給が決定し、
個人携帯への連絡は厳禁となった
くらいの出来事だった。
部下に金をたかる上司なんて初めて見た。
未だに神経がわからない。
引用元: ・その神経がわからん!その63