勤めていた会社の業績が下がって、
人員整理の噂も聞くようになったので
同僚のA、B、俺と3人で
「いっそ辞めて退職金で起業するか」となった
3人とも技能持ちだったので、
それを生かせば
小さい仕事が拾えるんじゃないかと思った
Aは嫁さんがいたが子供はおらず、
Bと俺は独身だったので身軽だった
3人で小さい事務所借りた
誰が社長とかではなく、
3人とも個人事業主で、
共同で事務所を借りているという形
まずは仕事を取らねばと外回りを始めた
その間留守になる事務所の留守番にとAが
「失業中らしいんで、バイトとして雇おう」と
「知り合い」だという女Cを連れてきた
Cは俺らより10歳以上も年上
当時40代半ば
(AとA嫁、B、俺、共に30代前半だった)で
真っ赤でちりちりパーマの髪、
生白くてガサガサした肌、
糸より細い眉毛の
「水商売の女性の化粧を落とした顔」
にしか見えないオバチャンだった
Bと俺は
「Aの愛人?だとしたら趣味悪いな」
と思ったが
でも
「普通に求職中の人だったら邪推しちゃ悪いし」
とモヤモヤしていた
1カ月もしないうちに、
邪推の方が正解とわかった
Aはあまり外回りに出なくなった
俺が外回りから帰ってきて、
事務所のドアを開けたら、
室内に妙な熱気がこもっていて
AとCが妙に赤い顔して
自席でもそもそ髪を撫でつけている、
なんてことが何度もあった
Bに言ったら
「俺もそれ、しょっちゅうある」
ということで
AはCとのオフィス不倫のために
わざわざBと俺に起業を持ちかけて事務所借りて
Bと俺が仕事もらうために
ペコペコあちこちに頭下げてる間
事務所で楽しく仕事以外のことに励んでいる、
と確信した
腹も立ったし、
Aの嫁さんにばれた時、
Bと俺が共犯に思われたら困るから
Aに「仕事のめどが立ったんで
この事務所は出ていく」と告げた
Aが
「いや俺1人じゃここ維持できないし!
第一、前の会社辞めてすぐ、
また次の事務所をつぶすなんて
恥ずかしい真似できるか!
世間になんて言われるかわかってんのか!」
と怒り出したので
「共同事務所なんて、
それぞれの都合が合わなくなったら
解散で当たり前じゃねえか」
とBと2人でさっさと自分らの荷物を運び出した
事務所はAの名前で借りて、
Bと俺はそれぞれ家賃(維持費込み)の
1/3をAに払っている形で
(ろくに仕事しないCのバイト代だって
1/3払わされてたんだよな、バカバカしい)
それが破綻した時はどうするか
というのは契約書を
作っていたわけではなかったから
「じゃーねー」とすぐ逃げられてよかった
その後、Bも俺も自分で事務所作って、
何かと協力し合ってやっている
Aも仕事はできるんで
うまくやってるようだが、
Aの事務所に出入りしている業者によると
Cらしい女が
「奥さん」として事務所にいつもいて
仕事もしないでただ「いる」だけなので
うっとおしいらしい
Aの元嫁さんはどうしているか
知らないが、
Aといるよりは幸せだろうと思う